賃貸借の場面では,借家の明渡し,家賃滞納,敷金返還請求など多くのトラブルが起きえます。
近隣トラブルでは,境界線や騒音,景観をめぐって争われますが,なかなか当事者間で合意に至りにくいものです。
【相談者】
長年駐車場として利用していた土地の一部に他人の土地が含まれていることが分かりました。
その土地の所有者はすでに亡くなっており,その相続人の方も存在しないようです。
土地の名義変更はできるのでしょうか。
【回答】
時効取得を理由に名義変更できる可能性があります。
1 時効取得
10年あるいは20年間,所有の意思をもって占有を継続すれば,時効によって所有権を取得することができます(民法162条)。
2 相続人が存在しない場合
相続人が存在しない場合,相続財産管理人を選任してもらうよう裁判所に申し立てることが原則ですが,相続財産管理人の管理業務には一定の費用と時間がかかります。
そのため,相続財産法人の「特別代理人」を裁判所に選任してもらい,その特別代理人を相手取って,所有権移転登記手続請求の訴訟を起こし,債務名義を取得することが近道です。
【相談者】
土地を相続したのですが,土地上に他人の建物があり,空き家状態です。
建物の所有者がどこにいるのか行方不明です。
もちろん地代も滞納しております。
空き家を取り壊して土地を有効活用したいのですが,方法はありますか?
【回答】
建物収去土地明渡請求の訴訟と代替執行の手段があります。
1 建物収去土地明渡請求
すでに地代の滞納があるということであれば,債務不履行(民法545条)を理由に借地契約を解除することができます。
解除によって,建物の所有者は原状回復義務(同条),つまり建物を解体する義務を負います。
それが建物収去土地明渡請求です。
2 行方不明者への対応
建物所有者に対して,地代の支払を催告し,支払いがない場合は解除する旨の意思表示をする必要がありますが,行方不明であればそれができません。
この場合,意思表示の公示送達(民法98条)の方法で催告・解除の意思表示を送達させることができます。
訴訟においても送達が必要になりますが,ここにおいても公示送達(民事訴訟法110条)が有効です。
3 代替執行
訴訟によって債務名義を取得した後は,代替執行の方法で建物の解体を実現できます。
解体費用等を立て替える必要があります。